PumpNews_July_No.91
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思います。動力系などは、お客様がいらっしゃらなくても動きっぱなしというようなロスがありました」そこへ省エネの提案を行ったのが、株式会社エオネックス、ジオエネルギー事業部、営業部、営業グループの酒井さんと、設備職人 棟梁の徳丸さんです。それは、設備交換だけを提案するものではなく、まず「見える化」することによって現在のエネルギーの使い方を把握し、データを見るだけで無駄が良くわかるようにしましょうというプレゼンでした。当初、「見える化」だけ実行しても本当の意味での省エネになるのかという疑問もありました。しかし二人は、まず現状を知ることが大切と提言。当時の公的な助成もあり、まずBEMS(ベムス: Building Energy Management System)を導入し、防災センターに中央制御システムを組みます。これにより館内の水、電気、重油といった、水・光・熱のエネルギーの動きを系統ごとに数値で把握できるようになりました。すると、どこに課題・問題があるのか、実際に見え、把握できるようになったのです。「設備が老朽化することでて出てくる不具合もさることながら、運用・運転することにおいての良さ、悪さが見えてきました。それまでは、電気量、重油の経費などはトータルな数値として『多い・少ない』を見ていただけでしたが『見える化』を実施したことで個々に、細かく分析できたのです。その結果を踏まえて、ロスの多い機器の更新を継続し、その都度、運用の見直しができるようになりました」と新滝社長。「見える化」の導入から運用改善や効果的な設備投資を続けていることもあり、エネルギーを大きく削減でき、環境貢献やお客様サービスの向上にもつながっているのです。情報共有と状況把握 お客様にもスタッフにも満足を約8年前に「見える化」を導入して以降、データ情報は運用改善に加え、メンテナンスや設備更新の際にも活かされています。その基本となるのが、社長をはじめ施設管理部の担当者および関係部署のスタッフと、メンテナンス担当の関係各社を交え、毎月開いている「エネルギーミーティング」です。そこでは数値、運転パターンなどが詳細にまとめられたレポートが提出され、無駄の発見や新たな改善に関する運用方法などの検討材料となっています。機器の更新をする際には運転データを分析し、必要な際には個別の計測診断を実施。得られた情報を基に、設備が最適なスペックとなるよう見直すようにしているのです。「ほとんどの場合、既存よりも性能の小さな機器への更新となるので費用が安くでき、その後の運用費の削減にもつながっています」と説明してくれたのは、徳丸さんです。「最も重要な事例が、館内に広く温水を循環させるHydoro MPCに試験導入した差圧制御システムです。ゆのくに天祥ほどの施設規模になると熱需要も大きく、また熱負荷変動も大きくなります。以前は最大熱需要に合わせた大きなポンプが使われ、負荷にかかわらず常時一定流量を循環させていました。この無駄を改善するためHydoro MPCを導入。しかし通常の圧力制御では効果が少なく、当時のグルンドフォス担当者に相談し差圧制御*に変更したのです。一般的な給水システムとは違い、密閉システムでのポンプ制御は吐出側の圧力と戻り側の圧力の差圧でポンプの制御を行うことが重要です。導入後はポンプの電力がなんと10分の1にまで削減でき、さらに無駄な循環が減った分、温水製造に使われる燃料も削減できて効果は絶大でした」と、笑顔がこぼれます。海外では広く採用されている差圧制御ですが、日本国内でこの制御方式をHydoroMPCで設定したのは、ゆのくに天祥が初めての事例。グルンドフォスポンプの差圧センサ**も初めて導入され、良い実例、実績となりました。「社長をはじめスタッフの方々の省エネへの意識も高く、無駄の削減と改善の成果につながっていますね」と話すのは酒井さんです。「経済性はもちろん、優先順位をしっかりと踏まえて提案するためにも、関係企業との協力と連携を深めることが大切だと感じます。そして省エネは重要ですが、施設サービスの質は落とさないのが大前提です。今後も、ゆのくに天祥の方々が考えていらっしゃることを実現できるよう相談をしつつ、期待に応えたいです」と、より良いコミュニケーションづくりへの姿勢にも余念がありません。最後に新滝社長は「省エネの基本にあるのは、お客様の満足度アップ。さらに接客業として、設備・環境面、現場の働きやすさも進化させていき、スタッフの満足度を上げることが、お客様の満足度を上げることになると考えています」と語ってくださいました。ゆのくに天祥では、省エネのための情報共有を怠らず、知識を積み上げ、どのスタッフでも分かりやすいシステムであるよう環境整備・改善を継続しています。そのすべてが「見える化」から始まりました。そこには、携わる人々全員の意識の進化が感じられます。その中で、グルンドフォスの小さなセンサが大きな施設の重要な支えとなっていることを自信に、これからの設備更新でも活躍したいと思います。*HydroMPCは圧力一定制御以外にも差圧、温度、流量などの制御機能を内蔵**差圧センサを含むグルンドフォスダイレクトセンサは世界累計220万台を出荷PROJECT納入先:ゆのくに天祥導入製品:自動給水ユニットHydro MPC(差圧センサ:DPI)、単段うず巻ポンプTP、直動式片吸込みポンプNBG、立形多段うず巻ポンプCRNE、温泉用深井戸水中ポンプSP用途:温泉水供給、温泉水汲み上げ北陸 加賀 山代温泉ゆのくに天祥 代表取締役社長新滝英樹さん設備職人棟梁徳丸義幸さん株式会社エオネックスジオエネルギー事業部営業部 営業グループ省エネサービス担当酒井孝則さん施設内で多様に活躍するグルンドフォスのポンプ(写真は直動式片吸込みポンプNBG)5PUMP NEWS

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