PumpNews_January_No.90
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テムには及び腰な世情がありました。しかしW杯開催によりFIFA基準が採択され、状況は一変。サッカースタジアムの設備担当者やグリーンキーパーたちからも、タイマーを設置することで自動散水ができ、節水にも効率化にもつながるインフィールド散水を採用したいという要望が出始めます。その頃佐野さんが展示会で出会ったのが、アメリカに本社を持つTOROのイリゲーションシステムでした。芝生のプロとして散水の学習にも余念のない佐野さんでしたが、このスプリンクラーを見て強く興味を持ちます。そして実証実験に参加するなど実際に散水の様子を確かめ、これだと確信したのです。「確信の理由は、その均一性です。水が均一に巻かれることで、芝は均一に成長していきます。例えば国際試合などを行うサッカーフィールドでは面積は平均的に9,000m2程あり、フィールドの外から水を均一に撒くことは論理的にも無理があるのです。また外から撒くシステムは、大きなものだと1分間に800ℓもの水を撒いてしまいますが、ひとつのフィールドに約6ステーションの装置を設置するスプリンクラーは1台が1分間に約50ℓ、半径約17mの散水ができ、無駄がありません。緻密かつ効率的に設計すれば均一性が高まり、しかも要望があればピンポイントで必要な量だけを撒けて節水になる。一度に大量に散水する必要がないため、ポンプも小さめのもので稼働できます。なによりスタジアムの特性ごとに、また担当グリーンキーパーのプランに合わせた設計ができるのです」ホームスタジアムとして 重要な役割を持つ芝と散水ノエビアスタジアム神戸も、2002年にW杯が開催された球技専用のスタジアムです。2003年には開閉式の屋根、パノラマレストラン、スポーツジム施設などが整備され、リニューアルオープンされました。「2017年の芝の改修工事に伴い、ハイブリッド芝✽が導入されることになったのです。期間はわずか半年。現場に出て、設計図と首っぴきで調整する日々となり、既存の配管が利用できるかどうかから検証を始めました。幸運だったのは、ノエビアスタジアム神戸はドームだったため雨の心配がありませんでした。しかし大変だったのは、地温コントロールシステムが導入されていたこと(この設備にはグルンドフォスのTP型も採用されていた)。配管が20cm間隔で設置されているのです。その中を縫って、スプリンクラーを敷設し、電磁弁と装置を設置しなければなりませんでした。図面上では既存配管を避けることができても、現場で掘り返してみると違っていることも多々ありましたね。その都度、プランは練り直しです」配管が余分に必要になることは、予定の散水量をキープするために想定以上の送水圧力が必要だということです。ポンプに関しても、ギリギリの設定ではダメ。予期せぬことに備えて余力のある設定、余力を見越した大きさのポンプが必要となります。そこで2次側負荷の変動に対し、インバータ制御で最適な圧力・流量を供給するHydro MPCが採用されました。数々のJリーグスタジアムの散水システムを手がけている(株)グリーンマスターズ清水には、AC長野パルセイロのホームスタジアムである南長野運動公園の球技場設備に携わった実績があり、その際グルンドフォスのポンプが導入された実例を経験していました。それを参考にしつつ、ノエビアスタジアム神戸でも安定性と効率をもとに推薦・採用したのです。グルンドフォスのポンプには、既設の他社ポンプと比較しても余裕のある設置ができる立形という優位性があり、振動が少ないため耐久性でも能力を発揮していると佐野さんは考えています。「私たちの設計は、観点・アプローチの仕方が他と一線を画しているとよくいわれます。かつて散水は、設備会社の仕事だという認識がありました。しかし、芝生をいかに良い状態にするかという視点に立って散水設計をするのが私たちです。そのための配管設計、ポンプ能力の選定、さらには排水設備まで、芝を知っているからこそ設計できる。そこに大きな違いがあると思います。サッカーではホームスタジアムとよく言いますね。基本的な芝生の維持管理に加え、戦略をも考慮して芝の状態を考え、チームの試合日程や戦略に則ったピッチの管理ができているからこそ、ホームと呼べるのです。サッカースタジアムのグリーンキーパーは、そこまで考えて散水管理しているんですよ」芝生の管理で重要なのは芝刈、散水、施肥です。佐野さんは「中でも散水は難しく、答えがないと思っています」と語りました。その一助となるべく、グルンドフォスのポンプは、次の試合へ向け安定的な散水のために働き続けます。✽ハイブリッドとは、天然芝に一部人工芝を挿入した敷設方法。PROJECT納入先:ノエビアスタジアム神戸導入製品:自動給水ユニットHydro MPC、立形単段うず巻ポンプTP (地熱コントロールシステム)用途:スタジアム インフィールド散水株式会社グリーンマスターズ清水代表取締役 佐野 忍さん床砂の水極め(砂の締め固め)時に散水範囲と均一性を確認。芝生が無い方が確認しやすい5PUMP NEWS

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