PumpNews_June_No.79
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EU諸国が連携する市民保護メカニズム世界中の災害発生を24時間体制で監視EUROPULSE近年、気候変動に伴う風水害、地震など、世界各地で自然災害は増加しています。しかも、政情不安や人口の増加などの要因が複雑に絡み合い、人々の暮らしを脅かしています。特にEU(欧州連合)の場合、その被害は国境を越えて拡大することも充分に考えられ、災害を被った国が危機に落ち入り経済が停滞してしまえば、一国だけの問題ではないといわれています。こうした未来予測を踏まえ2001年、EU内外での重大な自然災害、テロ、原子力災害などが発生した際、迅速に援助を提供することを第一目的として「EU市民保護メカニズム(EU Civil Protection Mechanism)」が立ち上げられました。現在、全EU加盟28カ国と域外の4カ国の計32カ国が参加しています。EU市民保護メカニズムの核となるのが、世界中の災害発生を24時間体制で監視し、支援要請の窓口なる、緊急対応調整センター(ERCC)です。ERCCはリアルタイムの情報を収集・分析し、加盟国と協力して被災国のニーズに合った援助をどのように提供していくかを調整します。発足以来、300件以上の災害について調査し、180件以上の災害支援をしてきました。最近では2014年、世界保健機関(WHO)からの要請でエボラ出血熱対策のために西アフリカの感染国で医療施設への患者の搬送、車や備品、生活必需品の供給を行っています。ERCCはまた、災害予防、災害対策の啓発も行っています。「備えと予防」があってこそ、災害発生時に効果的な対応が取れるためです。その内容は、収集する災害情報の質を向上させ支援が必要な対象に届きやすくすること、人々の災害管理に対する意識の啓発、リスクアセスメントとハザードマップのガイドライン策定、早期警告手段の強化、災害に対する予防策、災害からのレジリアンス(精神的回復力・抵抗力)向上などで、EUはこれらの方策についての手法を随時開発し、定期的に更新・実施しています。2014年初めからは防災・危機管理・災害への備え、という考え方を取り入れたEUの新しい市民保護法が施行されました。災害援助に関して新たに「緊急対応能力(Emergency Response Capacity)」という制度が導入され、加盟国が自主的に人員や設備、また専門家などをいつでも出動できる状態で準備しておき、実際に介入する際、必要に応じて即座に活用できる態勢を整えることとしています。地震大国であり、110の活火山を有する日本でも、災害に対しては、さまざまな体制が整えられていますが、災害は対岸の火事ではなく、世界全体の問題としてとらえ常日頃から各国との相互連携力を高めて準備しておけば、さらに円滑な災害対策が可能になることでしょう。PUMP NEWS8

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