PumpNews_December_No.73
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間には「地熱発電の影響で、温泉の泉質や温度に変化が生じるのではないか」という不安が次第に膨らんでいきました。「安全性はもちろん調査されていましたが、地形の変動によって泉質や温度に100%影響が出ないとは言い切れません。そこで、せいざん荘をつくるにあたり、有事の際には周辺の他の施設にお湯を供給できる体制を整えたのです」比較的浅い地点から源泉くみ上げを行う他の施設と異なり、せいざん荘は地下40メートル以上の深さまで掘り下げることで、渇水や大雨、干ばつなど自然環境の影響を受けにくい体制も整えました。オープン当時、くみ上げはコンプレッサーによるエアリフト揚水方式がとられていました。源泉が高温で、その温度に耐えられるポンプがなかったためです。当時の様子を「前任者からの引き継ぎですが」と前置きして、観光商工班の班長・天野美穂さんがこう話します。「スケールが付着しやすいエアリフト方式は、メンテナンスに手間がかかるのが難点です。年に2回はタンクからスケールをかき出す作業が必要で、その間は施設も休館せざるを得ず、苦労していたと聞いています」またコンプレッサーの機械そのものにも、頻繁にメンテナンスが必要でした。「もっと費用を抑えられないか」といった声が施工会社である日本地下水開発に届き、担当者が解決策を探していた時、グルンドフォスが100℃まで耐えられる高温用耐水絶縁式モータをリリースしたのです。「水中ポンプ方式で高温に対応できれば、源泉の安定供給とお客様の経費削減に貢献できる。フィールド試験をしていただけるお客様を探しているところに、絶好のタイミングでお話をいただきました」と話すのは、グルンドフォスポンプの代理店である東北ポンプシステム販売の鈴木淳一さん。柳津町役場、日本地下水開発、東北ポンプシステム販売、そしてグルンドフォスと四味一体で調査を進めたところ、水位を含め使用条件を満たしていることが分かり、導入が決定。まずは2011年1月に試験導入し、1年後の5月に本格導入されることが決まりました。エアリフトの施設を有効活用施工は日本地下水開発によって進められました。「ポンプについては、グルンドフォスの盤石な知識とサポートで安心していました」と話す同社福島営業所主任の佐藤浩之さんですが、設置には大きな苦労があったといいます。当初は、配管を地面に露出させて設置する計画でした。しかしそれでは、積雪のある厳冬期にメンテナンスできず、耐用性や衛生面でも問題が生じます。そこでメンテナンス面での利便性と予算の制約を踏まえ、エアリフト設備に使われていた地下のビットを活用することに。複雑な形状だった内部を再設計し、水中ポンプの配管に合わせて架台を作成。何度も設計図を引き、配管が収まるように工夫しました。導入されたSP8A-37のGHモータは、通常使われているキャンド式ではなく、耐水絶縁式。その利点についてグルンドフォスのセールスエンジニア、後藤聡はこう話します。「耐水絶縁式のモータは、コイルが樹脂で充填されておらず、直接巻いて軸動力としています。熱の影響を受けづらく、耐用年数がキャンド式よりも長いという特長があります」エアリフトから水中ポンプ揚水に変更して2年。最大の成果は、ランニングコストの削減です。「スケールによる湯揚管の目詰まりが、SPでは大きく改善されました」(天野さん)「エアリフトと違って揚湯管に空気だまりができず、一定の湯量を安定供給できています。初期導入費用はかかりましたが、ランニングコストが減り、施設運営全体でメリットを感じています」(新井田さん)電力消費量の面でも成果が上がっています。コンプレッサーの出力22 kWに比べ、SPは出力7.5 kW。3分の1の出力で毎分140ℓの豊富な湯量を引き上げるという高効率運転で、全体を見ると電力コストはおよそ半減したといいます。湯治に訪れる観光客のくつろぎの場として、そして地域住民の寄り合い所としての役割も担うせいざん荘。こうした施設を核に、「今後も多くの人に奥会津の良さを知っていただきたい」と新井田さんは意欲を見せます。「自然の恵みあふれる柳津町には、四季折々それぞれの良さがあります。もっと多くの人に訪れてもらえるよう、私たちも努力していきたいと思っています」せいざん荘の外観PROJECT納入先:西山温泉山村公園せいざん荘 (一般財団法人やないづ振興公社)導入開始:2011年1月(テスト導入)導入製品:SP8A-37 GHモータ付用途:温泉源泉のくみ上げ左から鈴木淳一さん(東北ポンプシステム販売)、後藤聡(グルンドフォスポンプ)、佐藤浩之さん(日本地下水開発 福島営業所主任)使用条件● 動水位よりモータまでの 水位は40m以上を確保● モータ側面流速は 0.5m/s以上を確保5PUMP NEWS

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