PumpNews_September_No.72
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機密型ビル設計により、33.1W/m2と極めて低いETTV(エンベロープ伝熱値)を実現自然環境を活かした持続可能なビルシンガポールのグルンドフォス新本社CASE STUDY Specialフォーミュラワンの技術を活用設計のコンセプトに掲げられたのは、自然環境を最大限に活かし、高い省エネ性を実現することです。フォーミュラワン・カーの設計に用いられるコンピュータ・モデリングを駆使し、設計・建設が進められました。具体的に活用したのは、フォーミュラワンの技術を駆使した換気モデル分析CFD(計算流体力学)。これは、フォーミュラワン・マシンの空気力学研究者達が、さまざまな天候下での車のパフォーマンスを視覚化し、理解を深めるために使用するコンピュータに基づいた技術です。グルンドフォスのエンジニアチームの狙いは、工場の機械的な換気を使用せずに大量のエネルギーを節約することでした。つまり、100%自然換気を利用して快適な状況をつくりだすのです。そのために考案したのが、中央の中庭と2棟のビルの間にあるパティオエリアに、ジャックルーフを設置して換気を最適化するシステムでした。熱された空気が上昇して屋根と中庭から放出され、通気され、室温が快適に保たれます。シンガポール特有の高温多湿の環境下でソリューションを確実に機能させるため、CFDモデル分析を使い、一般的な北風と南東風に基づく風速のシミュレートも実施しました。自然環境を活かす建屋のつくり建屋の向きも重要でした。空調や照明の使用量を最小限に抑えるために、季節や時間帯など様々なソリューションのモデル分析を実施。その結果、西向きの外面を最小限に抑えた建屋が完成しました。北向きと南向きの外面を多く取ることで換気環境を整え、昼光を効果的に利用できます。使用した資材は、30%が再利用材。廃棄物リサイクルを積極的に活用することで、施工プロセスにおいても環境への配慮を実施しました。完成したビルは、さまざまな側面で高い省エネ性能を発揮しています。空調システムにおいては、一般的な類似システムと比べて効率性は28%アップ。全体を見ると、シンガポールの基準値に比べてエネルギー節約量は40%も高く、電力予算は55%削減しました。ポンプ業界のリーディングカンパニーであるグルンドフォス。シンガポールの新本社には、企業を挙げて取り組んでいる環境保全への姿勢がそのまま体現されています。グルンドフォス・シンガポールは、アジア太平洋地域本社の新しいオフィスと工場を建設しました。新施設は、床面積3,000m2のオフィスビルと 9,000m2の製造・組み立て施設で構成され、200人の社員が勤務しています。7PUMP NEWS

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