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蒸留工程を経て加温された高温水を工場内に巡らす給湯ユニット焼酎粕から発生させたバイオガスをエネルギー源として動かしているボイラー蒸留に使われた水は、役割を終えた後、90℃近くの高温水になっています。そこで各製造工場では、蒸留機の脇に巨大なタンクを設置。貯蔵した温水を再度工場内に巡らせ、暖房やボイラー給水、洗浄水などに利用するシステムづくりを進めています。さらにもう一点、特筆すべき取り組みがあります。それは、焼酎粕をエネルギーとして循環利用するシステムです。焼酎粕とは、アルコール発酵後のもろみを蒸留した後に残る液体で、芋や米などの有機物が多く含まれています。排出される焼酎粕の処理は、どの焼酎メーカーでも大きな課題とされ、以前は肥料として田畑に散布されるほか、海洋投棄するメーカーも少なくありませんでした。しかし2003年に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行」(廃掃法)が施行され、散布が禁止。霧島酒造では、法施行に先駆け、焼酎粕の有効利用に取り組んできました。霧島酒造が採ったのは、バイオガスエネルギーとして活用する道でした。2005年9月、26億5000万円の投資をして敷地内にリサイクルプラントを建設。メタン発酵設備を整え、焼酎粕や芋くずの粉砕物からメタンガスを発生させ、回収するシステムづくりに乗り出しました。また2011年には再度大幅な投資を行い、処理能力を倍増しています。「現在は実用化に向けた最終段階ですが、メタンガスの回収率は高く、手応えを感じています。これが完全に実行された場合、かなりの量の熱エネルギーをバイオガスで代用できます。また、焼酎粕から出るほとんどの廃棄物も再利用することができます」と櫻井さんは笑顔を見せます。資源を有効活用するこれらの取り組みは高く評価され、2008年には第12回新エネ大賞「新エネルギー財団会長賞」を受賞しました。来たる2016年、霧島酒造は創業から100周年という大きな節目を迎えます。この記念すべき区切りを見据え、櫻井さんは自身の抱負をこう語ります。「生産量の増加に伴って、新しい社員がどんどん増えています。今後も霧島酒造というブランドを守り、より一層発展させていけるよう、後進の育成に力を注ぎたいと思っています」また外山さんも意欲を見せます。「工場全体を見渡すと、メンテナンスが必要な箇所はまだまだあります。100周年に向けて、設備の更新に努めていきたいですね。そして今後、後輩をしっかりと育てられるよう、自分自身も成長していきたいです」製麹(せいきく)麹をつくる工程。焼酎の品質は麹の善し悪しにかかってくるため、非常に大切。一次仕込み麹に酵母と霧島裂罅水を加え、発酵を進めて酒母をつくる。5日目にはアルコール度数が14%ほどに上がる。芋蒸し手作業により選別された芋は一斉に蒸され、適温に冷まされて二次仕込みの窯に運ばれる。二次仕込み酒母に蒸した芋と霧島裂罅水を加え、発酵を進める。アルコールがほのかに薫る二次もろみができあがる。蒸留二次もろみを蒸留し、アルコール度数約36℃の原酒をつくる。本格芋焼酎ができるまで霧島酒造の主力製品となる「黒霧島」。黒麹仕込み焼酎の先駆け的な存在として多くのファンを持つPUMP NEWS6

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